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薬学的に問題がある多剤併用 PPIとH2ブロッカー

【2017年9月26日追記】

支払基金における審査の一般的な取扱いが2017年9月25日に支払基金から公表されました。H2ブロッカーとPPIとの併用は医科において以下のような対応となります。
http://www.ssk.or.jp/shinryohoshu/kikin_shinsa_atukai/shinsa_atukai_i/index.files/atukai_2_290925.pdf

H2ブロッカー(ガスター錠等)とプロトンポンプ・インヒビター(PPI)(オメプラール錠等)との併用投与は、原則として認めない。

H2ブロッカー(ガスター錠等)は、添付文書上の適応が、「胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、上部消化管出血(消化性潰瘍、急性ストレス潰瘍、出血性胃炎による)、逆流性食道炎、Zollinger-Ellison 症候群、胃粘膜病変(びらん、出血、発赤、浮腫)の改善」となっている。
プロトンポンプ・インヒビター(オメプラール錠等)は、「胃潰瘍、十二指 腸潰瘍、吻合部潰瘍、逆流性食道炎、Zollinger-Ellison 症候群、非びらん性 胃食道逆流症、低用量アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制、非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍 の再発抑制」となっている。
胃や十二指腸の潰瘍は、胃酸分泌を抑えることで改善へ向かうものであり、胃酸の分泌には、ヒスタミンが胃にある壁細胞に刺激を与え、プロトンポンプ から塩酸が出る仕組みとなっている。
H2ブロッカー(ガスター錠等)とプロトンポンプ・インヒビター(オメプラール錠等)は同効の薬剤であり、それぞれが単独使用で所期の効果は期待できる。
PPI抵抗性の難治性逆流性食道炎については、PPIの弱点である夜間の効果減弱すなわち nocturnal gastric acid breakthrough(NAB)に対して、速効性のあるH2ブロッカー投与が効果的であるとの報告はあるが、その効果は1週間程度で長期投与では効果が減弱するとの報告もあり、併用による 効果について一定の見解は得られていない。
PPI抵抗性の難治性逆流性食道炎に対しては、まずPPIの倍量あるいは 1 日 2 回投与が強く推奨されている。(胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン 2015) さらに、2015 年 2 月に薬価収載された新しい作用機序を持ったPPI、ボノプラザン(タケキャブ)は胃酸で失活しない、速効性のPPIである。この 新規PPIの登場により、今後、PPI抵抗性の難治性逆流性食道炎の治療方針が変更される可能性が高いと思われる。 したがって、H2ブロッカー(ガスター錠等)とプロトンポンプ・インヒビター(オメプラール錠等)の併用投与は、原則認められないと判断した。


薬学的に問題がある多剤併用が疑われるものを疑義照会することなしにそのまま調剤することは指導監査の指摘事項に該当します。


PPIとH2ブロッカーの併用は、作用機序が異なるので問題ないように思えるのですが、保険調剤上、薬学的に問題があるとされています。

保険診療の理解のために(関東信越厚生局東京事務所 東京都福祉保健局指導監査部指導第三課)


そのため、胃食道逆流症などで夜間の胃酸分泌過多によるNAB(nocturnal gastric acid breakthrough)が見られる場合に、PPIに加えてH2ブロッカーを使用する場合があるようですが、必ず疑義照会が必要です。


医療機関側ではレセプト中にもコメントが必要となります。

例:
オメプラール錠10とタガメット錠200mg


なお、米国における逆流性食道炎(GastroEsophageal Reflux Disease;GERD)の患者数は約3900万人と推定されています。H2ブロッカーと PPIを併用しているのはその3分の1もいるといわれています。